ホーム > 蝶や蛾の世界を慧眼する > ナガサキアゲハ
まだ残暑の厳しい9月であるが、その頃になると大きな、黒い揚羽蝶をよく目にするようになる。
後翅に白い斑紋があり、また尾状突起がないことから、かの蝶はナガサキアゲハである。
ナガサキアゲハはゆるやかに、そして華麗に飛翔する。ナガサキアゲハは鳳蝶と名ずるに相応しい。
1980年代、ナガサキアゲハはここ関東では観察することなぞできない、南方の蝶であった。ところが2000年からポツポツと目撃される蝶となった。当時それは偶産種として扱われた。
私の記録によると、2002年9月に三浦半島でナガサキアゲハを初めて目撃している。
2015年になると、ここ神奈川ではナガサキアゲハは決して珍しいアゲハチョウではなくなった。神奈川で蛹にて冬を越し、土着している。
2014年9月、神奈川県川崎市麻生区にて採集 メス
同メスから採卵
1齢幼虫
ナガサキアゲハの羽化
ナガサキアゲハは南方系の蝶である。もともと西日本から南西諸島にかけて分布していた。それがナガサキアゲハは新天地を求めて北上している。
沖縄や八重山諸島のナガサキアゲハは前翅、後翅ともメスの翅面が白くなるらしい。
北上すると後翅の白い紋が小さくなっていく傾向がある。北上するとメスは黒化していく。
2015年4月に羽化したナガサキアゲハのメスの写真を掲載した。
すべて2014年9月に神奈川県川崎市宮前区での同じ場所から採集した幼虫を飼育し、越冬させた蛹から2015年4月に羽化した個体である。
全く白い紋が消失した個体は一番最後に羽化している。
後翅の白い紋が徐々に消失していくナガサキアゲハを並べてみる。
神奈川で見られる比較的ノーマルな斑紋
白い斑紋が小さい。
まだ白い斑紋の名残りがある。黒化が著しい。
完全に白い斑紋が消滅したナガサキアゲハのメス。
ナガサキアゲハの雌は北上するとどうして黒くなるのか?
蝶の黒化や白化は、他の蝶にもみられる現象であるのだが・・・・
ただ黒いナガサキアゲハの雌の崇高な美しさに魅了されてしまう。